サクヤテレフォン(完結)

謎のケータイを拾った浪人生、佐久良サクが、公園に設置された爆弾を探すため奮闘する話。

初めての方はこちらへどうぞ。
第一話から読むことが出来ます。
http://sakuyatelephone-otameshi.blog.jp/archives/cat_299067.html

「拐われチドリと偽りカイマン」の方もよろしくお願いします。
http://chidorikaiman-otameshi.blog.jp/

サクヤテレフォン 神様の言うとおり (impress QuickBooks)
インプレスコミュニケーションズ (2014-05-15)

やっと情報解禁になったので、堂々と宣伝しようと思います。
『拐われチドリと偽りカイマン』と、『サクヤテレフォン』が電子書籍になりました!

公式リリースページ:http://www.ips.co.jp/press/2014/05/001007.shtml
Quick Books ブログ:http://qb.impress.jp/2014/llc0508/

impress Quick Books で出版されます。発売日は5月15日ですが、今から予約することが出来ます。
Amazon Kindleストア、楽天koboなど、各電子書籍ストアで予約受付中です。

こちらのブログで前半部分(改稿前ver)を読むことが出来ます。
拐われチドリと偽りカイマン:http://chidorikaiman-otameshi.blog.jp/
サクヤテレフォン:http://sakuyatelephone-otameshi.blog.jp/



サクはあたりを見回してみた。もしかしたら、これは素人を狙ったTV番組のドッキリなのかもしれない。しかし、どうもカメラらしきものは見当たらず、意識を携帯電話に戻した。

「ご心配なく。別に特別な技術や能力を要求するようなお願いではありません。老若男女、どなたであろうと、E判定がびっしりの浪人生であろうと出来る事しかお願いをしませんから」

サクは背筋に氷でも入れられたかのような寒気を感じた。なんだこの女。なんでそんなこと知ってるんだ? そんなサクの思考を読み取ったかのような絶妙な間で、サクヤは話を続ける。 

「申し遅れましたが、実は私、神様なんですよ。だからわからないことなんてないんです」

通話口から聞こえるのは、先ほどと変わらぬ上品でおしとやかな声。

しかし今、サクがその声に対して感じるものは真逆になった。理解不能で底知れぬ、そこの見えぬ闇のような不気味さ。怯えるサクを、サクヤはさらなる恐怖に陥れる。

「佐久良ショウゴが息子、佐久良サク。私はあなたのことを知っています」

身元が完全に割れている。普通じゃないヤバい類の人間である可能性が出てきた。もしかしたら先程言っていた「多大な不幸」というのも嘘じゃないかもしれない。サクは、自分が知らないうちに追い詰められていたことを、今になって知った。拒否権はない。そう、これはもう完全に脅迫だ。

「そ、それで頼みってのは何なんですか?」

サクはつばを飲み込み、緊張しながら携帯電話に耳を済ませる。一体どんな事をさせられるのだろうか。電話越しのサクヤは本当に軽く、何でも無いことのようにこういった。

「簡単なことですよ。此の花公園の中に仕掛けられた爆弾を見つける。ただそれだけです」

「もしもし、聞こえますか?」

おしとやかだが、か弱くない。まるで絹の様になめらかな女性の声が携帯電話から聞こえてきた。サクは心の中でガッツポーズをとり、それが声に出ないように必死になりながら、声を少し引き締めて話し始めた。

「すみません。携帯電話を拾った者です。この携帯はあなたのものですか? よかったらそちらにお渡ししに行きますよ」 

「まあ、それはご丁寧にどうも。けれど、その必要はありませんわ」

上品な笑い声とともに聞こえてきた謎の言葉に、サクは首をかしげた。

「どういう事ですか?」

「どうもこうも、その携帯電話はあなたのものですから」

頭の中で細胞分裂のごとく増殖する疑問符にサクが飲み込まれていると、携帯電話の声の主は穏やかなトーンで話し始めた。

「はじめまして。私はサクヤと申します。これから1時間、あなたのお手伝いをさせていただきますのでよろしくお願いします」

「は、はあ。よろしくお願いします?」

サクは今の状況を全く理解できずに、気の抜けた生返事を返した。

「これから1時間。あなたには少しやってもらいたい事があるのです。あっと、ご心配なく。別にあなたが不利益を被るような頼み事ではありません。依頼を受けていただけるならば、それ相応の謝礼をお渡しする事をここに約束します。ここまではいいですか?」

「え、ええっと。はい」

 雲行きが露骨に怪しくなってきた。

「ご理解いただけたようでなによりです。そして前もってお伝えしておきますが、拒否権はありません。依頼を受けていただけなければ、あなたに多大な不幸が襲いかかる事でしょう」

「不利益被るじゃないですか!」

「大丈夫ですよ。依頼さえ受けていただければそんな不幸もありませんから」

何でもないように、電話越しの女性、サクヤは言う。

「知っていますか? それって日本語で依頼とは言わずに脅迫と言うんですよ」

少しの沈黙のあと、

「まあそうともいいますわね」

妙に明るい声でサクヤと名乗る女性は言った。

「認めちゃったよ!」

「ダイジョブダイジョブ」

「危険な場所のガイドをやってる外国人みたいなカタコト止めてください!」

サク渾身のツッコミを華麗に無視し、サクヤは続ける。

「それでは依頼の件、受けて頂けるでしょうか?」

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